会社案内やパンフレットに使用するカラーの配色は、読み手に与える印象に大きな影響を及ぼします。私たち人間は、それぞれのカラーに対して、無意識のうちにある種の「先入観」を持ってしまうからです。

こちらが狙った印象を、読み手に的確に伝えるには、こうしたカラー配色の取捨選択が欠かせません。異なる複数のカラーを自在に操り、会社案内ごとに使い分ける知識とテクニックは、「プロ」ならではの部分だと言えるでしょう。

今回は、そんなカラー配色が持つ基本的な性質をご紹介。ビジネスシーンで使うべき代表的な配色バランスを解説しようと思います。

カラー・配色が持つ印象とは?

冒頭にて触れた通り、私たちはそれぞれのカラーに対して、ある種の先入観を持っています。例えば、赤色を見ると活動的でアクティブな印象を受ける一方、本能的に危険に対する警戒感や、炎のような過激さを感じます。

これは会社案内に使用するカラーにおいても例外ではなく、色の選択次第で冊子から受ける企業のブランドイメージや、製品のインパクトに大きな変化を及ぼします。

カラーが持つメリットとデメリット

良質な会社案内をデザインするには、それぞれの色に対するメリット・デメリットの両面を把握し、使いこなす技術と経験が欠かせません。

以下に、基本となるカラーの特性をご紹介します。ご自身が本能的・心理的に感じている印象と当てはめ、色の持つ特性を肌で体感してみましょう。

それぞれのカラーが持つ心理的効果の代表例

メリット デメリット
赤系 情熱的・活動的・前進 危険・警戒感
青系 冷静・信頼感・爽やかさ 冷たい・不安
緑系 エコロジー・優しい・成長 保守的・地味
黄色系 元気さ・明るさ・希望 軽い・浮つき
ピンク系 女性的・可愛さ・思いやり ケバケバしい
黒系 重厚感、高級感、威厳、力強さ、知的 不安、暗闇、恐怖
白系 清潔、純粋さ、軽量色 空虚、薄情、孤独

如何でしょうか。多くの方は、例示された心理効果と同様の印象をお持ちかと思います。これらの印象を基礎として、商品やページごとに最適な配色を生み出すことが、カラーデザインで最も注意すべきポイントです。
また、これらの先入観を逆手に取って、イメージにない配色を選択することで引き立つデザインを作ることも可能です。

引き立つデザインとは、例えば、「就職相談会の際の採用案内」や「量販店に置くパンフレット」など、近しい業種・商品などの集団の中にあっても「埋もれないデザイン」のことで、そのような場で目を惹く効果を得られます。

カラーバランスが与える印象

当然の話ではありますが、実際に会社案内を制作する際には、ただ単色使いをすればいいというものではありません。先ほどご紹介したカラーの特性を、状況に応じて組み合わせることで、より一層の印象効果を定めます。

更に、カラーバランスを使いこなすことで、「エレガント、カジュアル・ナチュラル」など、ページや商品の印象効果は自由自在。ページ毎に狙った視覚効果を生み出すことが可能です。

組み合わせで広がる配色効果

同系色での配色効果


赤色と橙色など、色味の近いもので組み合わせる方法です。パンフレット全体の調和が取れ、まとまった感覚を与えます。

反対色を使った効果


赤色と青色など、対極に位置するカラーを組み合わせる方法です。ただし、こうした色使いはキツさが生じてしまうので、緩衝材となるカラーを挟み込みます。

トーンを使った効果


例えば赤色1つ取っても、濃淡や明暗などにより印象が生じます。パンフレットの性向や企業のブランドイメージによって、トーンを使い分けることも重要です。

企業に選ばれる人気カラーとは?

「企業に選ばれるカラーとは、どのような配色か?」多くの方が、疑問に感じている部分かと思います。実は企業向けパンフレットや会社案内は、ブランドロゴや業種に沿って色合いを決めることが多く、これらの色をベースとすることが基本です。

企業ロゴに使用されるテーマカラーにはブランドイメージが含まれていることが多く、パンフレットに使用することで、企業ロゴとの相乗効果が期待できるからです。

パンフレットの配色を目にしただけで、その企業が頭に浮かぶような会社案内を想像して下さい。目を通しているだけで、その企業が深く印象に残るかと思います。

日本企業のコーポレートカラーTOP3

日本企業が使用するコーポ―レートカラーは、原色である「赤・青・緑」が好まれる傾向にあります。更に、企業の業種によって「人気のカラー」が存在するので、順番に確認してみましょう。

赤系


活動的で情熱的な印象を与える赤系の色は、小売業や運送業などに好まれるカラーです。アクティブで活動的なイメージが、企業イメージを明るく促し、親近感を与えます。

青系


冷静で知的な印象を与える青系カラーは、家電製品・IT企業などに好まれるカラーです。ブランドロゴに知的なイメージを与え、製品に対して信頼感を持たせることができます。

緑系


緑系カラーは、研究機関や化学関係・更には農業関係の企業に高い需要を有しています。エコロジーや環境への配慮、自然生命などを連想させるからです。また、環境に配慮した製品パンフレットなどにも、好んで用いられる色合いでもあります。

配所比率が与える影響

会社案内やパンフレットを作る際に、使用するカラーの取捨選択と同じくらい大切な要素が「配色比率」の問題です。

あまり雑多な配色は、目にキツい印象を与え好ましくありません。一般的には、配色は以下の3点に絞って行われ、「3色に絞った色使い」を行います。

カラー配色のバランスとセオリー

ベースカラー

全体の大半(5割~8割)を占める部分です。濃い色使いは文章が読みにくくなるため、基本的には白系などの薄い色が好まれます。

アソートカラー

全体の2割程度であるものの、実は最も強いメインカラーとして作用します。ブランドカラーが用いられることが多い部分です。

アクセントカラー

文字通りアクセント的な意味合いを持つ配色部分です。ベースからを引き立たせる役割を持ち、同系色の濃い色や反対色などを用います。

ユニバーサルデザインと配色

日本をはじめとする先進各国では、ご存知の通り高齢化社会が進んでいます。色味の中には高齢者の方や色弱の方にとって見え難いものもあり、メインターゲットによっては使用配色の調整が重要です。

また、色の見え方には男性と女性の性差があると言われており、男性よりも女性の方が感度が高いと言われています。男性にはちょうど良くとも、女性にはキツく見えることは十分に考えられるケースです。

明度や彩度を調整することで、幅広いユーザー層に対応したデザインは、「ユニバーサルデザイン(普遍性・共通性の高いデザイン)」と呼ばれています。多くのユーザーが想定されるパンフレットでは、是非とも意識したい部分です。

まとめ

それぞれの色には固有の特色があり、私たちの脳に無意識に作用します。会社案内に用いられるカラー配色では、これらを重視したデザインを行うことが基本です。

色が与える視覚効果は思った以上に大きく、仮に書いてある文章や使用写真が同じでも、カラー配色のレイアウト次第で受ける印象はどうにでも変化します。良質な会社案内を手にするためには、ブランドカラーやイメージカラーを中心に、配色バランスの取捨選択・検討を繰り返しましょう。

なお、閲覧ユーザーやメインターゲットによっては、明度や彩度を調整したユニバーサルデザインも有効です。目に優しく読みやすいデザインは、多くの方に好印象を与えます。