情報過多の現代において、顧客に自社の存在を認知してもらうにはどうするべきでしょうか?そんな時に役立つのが、「コミュニケーションデザイン」です。自社と顧客の関わり方を検討し、適切なメッセージを届けることができる考え方です。

ここでは、コミュニケーションデザインを活用した成功事例や制作時のポイントを確認していきましょう。

コミュニケーションデザインとは

コミュニケーションデザインとは、自社と顧客の関わり方を検討するための考え方です。アプローチ方法や具体的な内容を設計することで、顧客とのコミュニケーションをスムーズにします。

コミュニケーションデザインの概要については、下記の記事で紹介していますので、予備知識がない場合は先にご覧下さい。
〈参照〉コミュニケーションデザインとは?会社案内パンフレット制作にも必要?

コミュニケーションデザインの成功事例

コミュニケーションデザインに取り組み、顧客との関係を充実した企業の事例があります。ここでは2つの企業の取り組みを成功事例として紹介します。

DK-Power(ダイキン工業株式会社)

総合空調専業企業として知られるダイキン工業株式会社ですが、エネルギーソリューション事業を行う子会社として株式会社DK-Powerを設立しました。立ち上げに際して、コミュニケーションデザインに着手しています。

具体的な取り組みの一つは、部門を横断した社内コミュニケーションでした。デザイン担当者が広告や広報の仕事にも関わることで、DK-Powerが社会にもたらす価値を伝える適切なメッセージを設計しました。そして一貫性を持つ強いメッセージとして形にしています。その一つの結果がロゴとシンボルマークです。

同社のロゴとシンボルマークは、企業の思いやブランドストーリーを含んだものとして仕上げており、事業を進める人々の誇りになるよう努力したとしています。担当者はデザインの最終的な目的は伝えることであるとしており、コミュニケーションデザインによりその目的地に向かって順調に進んでいるようです。

〈参照〉「つながり」と「ブランド」をデザインするコミュニケーションデザインとは/ダイキン工業株式会社

1969 RECORDSの事例(GAP)

衣料品の小売店「Gap(ギャップ)」が展開したミュージックプロジェクト「1969 RECORDS(1969・レコーズ)」をコミュニケーションデザインという観点で見てみましょう。

「1969 RECORDS」はGap創業の年をキーワードとして、ミュージックビデオとデジタルルックブックを公開したプロジェクトです。5組のアーティストとコラボレーションした作品を公開しています。このプロジェクトでは、Gapのルーツにちなんだ作品を公開することで、顧客との関係を構築しようと試みています。

1969年8月、サンフランシスコのオーシャンアベニュー沿い誕生したセレクトショップがGapです。当時はデニムとレコードを扱っており、幅広いデニムボトムスと最新音楽を囲まれた店内に若者が溢れたと言われています。「1969 RECORDS」では、その原点となる最新音楽に立ち返り、世間ではまだ流行する前の最新アーティストを起用しました。

特徴的なことは、ミュージックビデオ内では、企業ロゴを押し出すことをしていない点です。メッセージやコンセプトが伝わりやすいよう、アーティストや楽曲の知名度に依存していません。短期的な注目ではなく、長期的に顧客との関係を続けられる表現手法を取りました。その結果、コミュニケーションデザインの専門家から高評価が寄せられており、継続的な顧客とのコミュニケーションに成功している事例と言えるでしょう。

〈参照〉1969 RECORDS/GAP

コミュニケーションデザイン制作のポイント

顧客に適切なメッセージを届けるための考え方がコミュニケーションデザインです。
社内に目を向けることと同時に、どのような顧客に情報を届けるのか明確にする必要があります。ここからは制作時の顧客をターゲティングする際のポイントを確認していきましょう。

ターゲットユーザーを明確にする

顧客の定義からすべては始まります。どのような人が製品もしくはサービスを購入してくれるのか、具体的に絞り込みましょう。「20代の女性」といった大きな設定ではなく、その人物が持っているライフスタイルや属性にまで想像を及ぼすべきです。

たとえば、「どのような価値観を持っている人だろう?」「どのような趣味を持っている人だろう?」といった質問を掘り下げることで、ユーザーをターゲティング(絞り込み)していくと良いでしょう。

また、絞り込む内容は自社の製品もしくはサービスに関連する要素を浮き彫りにしていきます。たとえば、娯楽に関連した製品であれば、ターゲットユーザーが好む雑誌やテレビ番組などを明確にする必要があるかもしれません。一方で、ビジネスシーンで利用される法人向けサービスの場合は、利用者の役職をはっきりと想定しておくべきでしょう。定義すべき項目は製品やサービスによって異なります。

ターゲットユーザーが接するメディアを選ぶ

顧客は普段、どのようなメディアに触れているか、想定します。そうすることで、どのメディアを利用すれば、顧客にメッセージを届けられるか判断する際に役立ちます。

流行を意識しすぎると、オンラインのメディアやSNS、スマホアプリといったところに目がいきがちです。しかし、新聞や雑誌といったアナログのメディアも無視できません。また、家庭の外で接触する媒体を「アウト・オブ・ホーム・メディア」と表現するように、電車や街中で見かける広告などにまで想像をめぐらせましょう。

自社の都合ではなく顧客の視点から考えることで、メッセージが響くメディアを絞り込みます。

ターゲットユーザーが利用するツールを知る

顧客はどのようなツールでコミュニケーションを取っているでしょうか?SNSを介した友人が多いのか、オフラインでの交流が主なのかといったことを想像します。

ターゲットユーザーに最適なアプローチか検証する

コミュニケーションデザインによる制作物を広告やウェブメディアに公開したのち、顧客にきちんと届いているか検証していきます。流通する情報量は年々増加しており、今後も増え続けと考えられます。

繰り返し確認してきたように、顧客の視点に立ったアプローチが重要です。なぜなら、顧客は自分の興味がない情報には目を向けず、まったく注目しないのです。つまり効果が確認できないメッセージを継続的に公開し続けても、顧客に気づいてもらえる可能性は低いということになります。

「顧客が求めているメッセージを提示できているか」「顧客が受け取りやすいタイミングで情報を届けられているか」など、ここまでのステップを踏まえて最適なアプローチになっているか検証しましょう。

コミュニケーションデザイン製作時の注意点

コミュニケーションデザインでは、制作が完了した後に行うべきことがあります。それが、効果検証と最適化です。自社と顧客の関係を適切に取るために、この2つの要素について理解しておきましょう。

制作後の効果検証が大切

顧客とのコミュニケーションが想定したとおりに効果を出しているか検証することが重要です。効果が想定したよりも出なかった場合の対策として、2つのアプローチがあります。1つは、制作したものが適切であるか確認する方法。もう1つは外部要因を調査する方法です。

ターゲットユーザーの定義付けに誤認がある場合や公開する媒体が適切ではない場合では、想定していた効果を得られないことがあります。顧客のターゲティングが適切にできていたか、コミュニケーションを取れる設計になっていたか、定義付けを振り返ることで改善が可能です。

2つ目の外部要因に関しては、競合他社に目を向けます。コミュニケーションをデザインする段階では、自社の強みと顧客に注意が向いてしまいがちです。そのため、競合他社の存在を見落としてしまいます。しかし、顧客は自社よりも優れた強みを持つ競合他社に興味を向けている場合もあるので、自社と顧客だけでなく競合他社の存在も踏まえてコミュニケーションをデザインしていくことが大切です。

継続的に調整を行い最適化していく

制作物は改善を繰り返すことで、効果を高めることができます。広告において顕著に現れることですが、1つのクリエイティブ(制作物)を長期間にわたり使い続けることはありません。顧客と制作物の間に慣れが生まれると飽きてしまい、効果が薄れていくでしょう。長期的に顧客との関係を持つためには、状況に応じて形を変える最適化が必要になります。

どのような制作が適切であるか考慮する際の視点には、Consumer(顧客)・Company(自社)・Competitor(競合社)を分類して考える「3C分析」や、顧客の頭の中での位置づけを争う「ポジショニング戦略」などのフレームワークを参考にすると良いでしょう。

まとめ

コミュニケーションデザインは、自社と顧客の関わり方を適切な形に整えるために重要な考え方です。

コミュニケーションを適切に設計することで、情報過多な現代であってもメッセージを届けやすくなります。ターゲットユーザーの定義づけと制作の最適化を続けることで、自社と顧客の関係を築いていきましょう。